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2012年9月13日木曜日

【二五五文字書評】ジョン・レノン対火星人 (講談社文芸文庫)/高橋源一郎


初期三部作の中で、最初に執筆された作品。他二作と比べると、比較的物語としての形を留めているからまだ読みやすい。全共闘時代が下敷きになっていることが判ればメタファも解りやすく、特に冒頭部分などは「おいおい、高橋源一郎なのにそんな安直な比喩で大丈夫か?」と心配になるレベル。解りやすいだけに、行間ににじむ「これを書かねばならぬ」という切実な思いが読み取れ息苦しくなる。ナンセンスはいつもの事だが、けっこうなエログロで紡がれる言葉の波からは、理不尽に対する憤りとともに感傷的な感情が感じられて、これまた息苦しくなる。

2012年9月12日水曜日

【二五五文字書評】虹の彼方に (講談社文芸文庫)/高橋源一郎


初期三部作の三作目。本作もやはり、学生運動での勾留経験がベースにあるようだ。抽象化された物語は嫌いではないが、全共闘時代の社会批判と結託すると興味が薄れてしまう。この時代の空気を知らないことと、この時代を生きた若者の心情を巧く理解できない事が原因だと思うのだが。カール・マルクスや金子光晴が登場し、脈絡のない荒唐無稽な物語を紡ぐ。書評を見ると「この破綻こそが、文学の前衛なんだよ」となりそうだが、「こういう小説が持て囃された時代があったんだな」という感が残る……。理想はやはり、虹の彼方にしかないのでしょうか。


2012年9月11日火曜日

【二五五文字書評】さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)/高橋源一郎


予想以上に難しい小説。抽象的な物語(詩?)を多層的に重ねる脱小説的な様式は美しく、また現代文学への批評を含んでいる事は解る。難しいのは、抽象を重ねて何を描いているのかという事。ギャングは暴力の暗喩だろうし、著者の半生を重ねれば学生運動を指しているのであろう。社会との関わりを描いているのだろうが、残念ながら全共闘時代の世相や風俗に疎く、詩の知識に乏しいため理解が難しい。細部は美しくユーモアに富み好きな類の小説なのに、深い理解が叶わないのは歯がゆい限り。小説の面白さは、読み手の知識に依るところも大きいですね。

2012年1月27日金曜日

【二五五文字書評】一億三千万人のための小説教室 (岩波新書 新赤版 (786))/高橋源一郎


小説家が書いた小説指南書を読むと、作家が小説とどう向き合っているのかよく解り面白い。本書の「小説とは何か」と問い続ける辺り保坂和志氏の論に通じる所があり、「世界をいままでとはまったくちがったように見る」は、大江健三郎氏の言う「異化」に通じる所があるように思う。「物事をちがった角度から見て、いかに新しい物を小説に持ち込むか」って辺りが小説を書く上でのキモ……なんですかねぇ。小学生のための小説教室をもとにまとめた書だそうで、とても解りやすい説明。大江氏の「小説の方法」の後に読んだから、余計にそう感じるのかも。

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