2012年9月12日水曜日

【二五五文字書評】虹の彼方に (講談社文芸文庫)/高橋源一郎


初期三部作の三作目。本作もやはり、学生運動での勾留経験がベースにあるようだ。抽象化された物語は嫌いではないが、全共闘時代の社会批判と結託すると興味が薄れてしまう。この時代の空気を知らないことと、この時代を生きた若者の心情を巧く理解できない事が原因だと思うのだが。カール・マルクスや金子光晴が登場し、脈絡のない荒唐無稽な物語を紡ぐ。書評を見ると「この破綻こそが、文学の前衛なんだよ」となりそうだが、「こういう小説が持て囃された時代があったんだな」という感が残る……。理想はやはり、虹の彼方にしかないのでしょうか。


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