2012年12月26日水曜日

【二五五文字書評】半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫)/村上龍


よくもこの分量を破綻せずに最後まで描ききったものだと、感心することしきり。章によって北朝鮮、日本政府、イシハラグループなど視点を変えて語られるが、振り返ってみれば全ては結末の必然性を高めるため、絶妙な位置に配置されていたように感じる。シミュレート系の村上作品では、「問題意識を持て」と説教じみた主題が示される事が多いのだけれど、本作では集団に馴染めない少年たちを通じて描かれる「個や国の自立」の方が主題ではないかと思う。血みどろの結末を迎えてなお、ロマンチックな雰囲気を漂わせて終わる辺り、さすがは村上龍です。

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