2012年5月5日土曜日

【二五五文字書評】山ん中の獅見朋成雄 (講談社ノベルス)/舞城王太郎


舞城が描く異郷訪問譚。「千と千尋~」との類似が指摘されるが、遡れば宮沢賢治作品や、柳田国男が言う「マヨイガ」「山人」まで辿り着く。更に言えば浦島太郎とか。モチーフの取り方を見ると「不思議の国のアリス」も混入か。基本構造は、行きて帰りし物語。帰ってくると少し成長しているという定石は外さないが、特有の疾走感で描いている。自己同一性がテーマだが、旧来の文学ならウジウジと思い悩む所を一気に駆け抜けてしまう。舞城だからそれが良いんだけど、最初から同一性が確立している感や、問題を置いてけぼりにしてる感があり消化不良。

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