2012年8月25日土曜日

原稿用紙一万枚! 清涼院流水『JDCシリーズ』をついに読破!


舞城王太郎のルーツを辿って、清涼院流水を読み始めたのは失敗だったのか何だったのか。やっとの思いで、御大(清涼院流水)、の『JDCシリーズ』を、読破しました。

原稿用紙にして一万枚。文庫にして六千二百五十頁。通常なら二十五冊分の分量を、十二冊に詰め込んでいるのですから……読んでも読んでも進んでいる気がしないという感覚を、ご想像いただけるのではないでしょうか。

一言で感想を述べるならば、「疲れた」ということになります。
とにかく、すべての作品が長い! そして文章的に、読むのが辛い! 慣用句や受動態を多用するから文が薄っぺらくなってるし、そのくせ難しい単語や言い回しを使うから取ってつけた感が否めないし……。

“日本語の文章で書かれた小説”としてはちょっとアレだけど、御大の曰くこれは“R(ラー)言語の文showで書かれた大説”らしいから、これでよいのでしょう。

しかし何故わたしは、そんな小説(大説?)を、必死になって読んでるんでしょうか?(笑)

いや、困ったことに、嫌いではないんですよ。
読むのは辛いんだけど、多彩なキャラクターの量産と、大胆かつ綿密に練られた常識破りのプロットはすごいと思います。風呂敷の広げっぷりは、天下一品。しかもその風呂敷を、きちんと畳まないで放置したり、もっと大きな風呂敷広げて覆い隠しちゃったり……後始末まで破天荒なところも、御大ならではです。

あと特徴的なのは、言葉遊び(駄洒落?)によるコジツケと、トンデモ本的な超展開ですかねぇ……普通の作家ではちょっと、こういう設定を思いついても、形にしようとは思わないのではないでしょうか。

「さすが御大! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
そこにシビれる!あこがれるゥ!」


JDCシリーズはもう一作、『双子連続消去事件』の執筆が予定されています。『カーニバル』のあとのエピソードですので、時系列的にも最新の話になりますね。
『コズミック』と『ジョーカー』が対を成す物語だったように、『双子連続消去事件』は『彩紋家事件』と対を成す物語になるとかならないとか……。

さて、『読書メーター』で一冊づつ感想を書いていたので、まとめて掲載しておきます。
読書メーターは、感想の文字数制限が二百五十五文字です。御大の言葉遊びを見習って……という訳ではないのですが、すべての感想を制限文字数ぴったりで綴ってみました。

まぁ、感想と言うよりは“愚痴”ですがね(笑)

コズミック&ジョーカー

コズミック流 (講談社文庫)
流水大説、初挑戦! てか、1200の密室殺人とか、どういうこと(笑) ただただ、密室殺人ばかりが19件起こって、上巻が終わってしまった。まさかこのまま、残りの1181件を消化するつもりでは……って、頁数足らんか(笑) この風呂敷を、どう畳むのかが楽しみなんだけど、色々と良くない噂も聞こえるし。期待しない方が、良いだろうか。著者オススメの「清涼in流水」の順に読むことにします。だから次は、ジョーカー流(上巻)ですね。物語の途中で違う作品に映るってのも変な感じだけど、作者の趣向に乗って楽しむことにしましょう。

ジョーカー清 (講談社文庫)
作者の趣向に従い「コズミック流」から。意外と普通のミステリに見えたんだけど、信じちゃいけないんだろうか。作中作を装っているように見えるんだけど、何かの伏線なんだろうか……なんて勘ぐること自体、間違ってる? それにしても、探偵投入しすぎ。なんでみんな必殺技的に、固有の推理法とか持ってるの(笑) コズミックの大量密室も、本作の探偵大量投入も、既存のミステリの枠を越える試みと理解するが、試みが功を奏すかどうかは後半待ちですかね。という訳で、次は「ジョーカー涼」読みます。さてこの大風呂敷、どう畳んでくれるのやら。

ジョーカー涼 (講談社文庫)
投げ出したくなった本は数あれど、投げ捨てたくなった本は初めて。もう何処から突っ込めば良いのか、いやそもそも突っ込むべきなのかどうか……まぁ、嫌いじゃないんだけど。でも、文章が稚拙なのは、気になった。風景描写は厨二病風味で、人物は描写じゃなくて説明だったりして。大風呂敷を広げても、畳まなくても良いみたい。クシャクシャに丸めて、何度か広げて丸め直して、放り投げておけば良いみたい。後日また、丸め直しに来るかも……って訳で「コズミック水」に進みます。さて、放置された謎も含めて綺麗に畳んでくれるのか、それとも……。

コズミック水 (講談社文庫)
「ジョーカー」読了時には思わず本を投げ捨てたくなったが、今回は思わず破り捨てたくなった。十人居れば十二人くらいは「こんなもんミステリじゃねぇ!」と怒るだろうけど、著者は「ミステリどころか、そもそも小説じゃねぇし。流水大説だよ?」と開き直ってはばからない。流水大説が如何なるものか解らんが、大説とは本来「君子が国家や政治に対する志を書いた書物」の意味。そこまで崇高な作品には見えないし、どっちかって言うとトンデモ本の範疇だろう。そしてトンデモ本だと思って読むと結構楽しいし、更に困ったことに意外と好きかもしれん。


カーニバル

カーニバル一輪の花 (講談社文庫)
カーニバル全五巻、原稿用紙にして五千四百枚にわたる大作の序章。全体でどれ位の分量か、もはや想像が及びません。写真で見ると迫力ですが。 http://instagr.am/p/L6_TG9Ix3K/ 事件の始動までを描くだけで、単行本一冊を消費。事前に主要キャラを描く事で、事件後の悲惨さを際立たせようとする意図だろうが少々くどい。丁寧すぎるのではなく、繰り返しが多い。本筋以外でも、一文の長さを揃えている箇所があったり趣向が凝らされているが、何の意図があるのかまでは解らなかった。次巻への期待は掻き立てられた。

カーニバル 二輪の草 (講談社文庫)
六百頁超って凶悪。読んでも読んでも終わらない。しかも巻が進むにつれ、頁数も増える素敵仕様。まだ半分も読んでないのね。あー、なんか愛を感じるわー(棒) ついに「犯罪オリンピック」開幕。ビリオン・キラー(十億人を殺す者)、一日に四百万人づつ殺害、舞台は世界の名所など、今回も大風呂敷を広げてくれました。コズミックの風呂敷もデカかったけど、それでも一年で千二百人の殺害予告。今回は十億人とか、スケールアップし過ぎ(汗) この風呂敷がきちんと畳まれる事を願う反面、どうやって放り投げてくれるのか楽しみだったりもします。

カーニバル 三輪の層 (講談社文庫)
二週間ほどずっと、カーニバルにかかりきり。三巻目まで読んで、やっと犯罪オリンピックも上半期が終わったようです。今回も超絶展開の連続で、もうどこで驚けばいいのやら、呆れればいいのやら。食傷気味で惰性で読んでいるような感じですが、広げまくった大風呂敷が畳まれることを期待して後半戦に突入したいと思います。あと二巻。最終巻は「五輪の書」ってタイトルがついてるけど、まさか「真犯人は宮本武蔵だ!」なんて言うつもりじゃ……いや、まさかね。「コズミック」の悪夢が蘇っただけです。オリンピックと五輪がかかってるだけだよね……

カーニバル 四輪の牛 (講談社文庫)
やっと四巻まで読了した。犯罪オリンピックも、やっと下半期に突入……と思いきや、三分の一程度が上半期の回想だった。語り手を変えてはいるが、繰り返しはつらい。並行して起こった新エピソードも語られているが、それでも繰り返しはつらい。全体的に視点を変えて語り直す傾向があ上での、さらなる繰り返しはつらい。無駄を省けば半分くらいの分量になりそうなものだが……無駄と呼んではだめか。長長編になると、前半の語り直しも必要なこと? いよいよ次が最終巻。期待しちゃいかんと解ってはいるんだけど、やっぱりラストに期待しちゃいます。

カーニバル 五輪の書 (講談社文庫)
派手に広げた大風呂敷。最期にはきちんと畳まれる事を、期待するのではないでしょうか。あまりの大きさに畳みきれないのではと、不安に思うかもしれません。そんな期待や不安の遙か斜め上を、カッ飛ばしてくれるのが清涼院流水なのです。終盤になってから更に大きな風呂敷を広げ始め、元の風呂敷を覆い隠してそのまま放置するという離れ業。まるで狐に摘まれたかの様な読後感は、決して他では味わえません。だってこれは「日本語の文章で書かれた小説」ではなく、「R言語の文SHOWで書かれた大説」なのですから。それはともかく、長かった(疲)


彩紋家事件

彩紋家事件 (1) 奇術が来りて幕を開く (講談社文庫)
読了までに、かなり時間がかかった。一旦手を止めると、なかなか手が伸びないという意味で……。三分の二程度は、奇術サーカスの描写に費やされていた。延々と続く奇術の演目を、文章だけで追っていくのは正直言って辛かった。それほど描写が巧い訳でもないし、この時点で挫折する人は多いのではないだろうか。コズミック、ジョーカー、カーニバル、本作と読んで感じたのは、量を書くことが目的化してるのではないかという事。どうしても、物語を引き延ばしている印象を受ける。せめて伏線として機能していることを期待しつつ、次巻へ進もうと思う。

彩紋家事件 (2) 白と夜 (講談社文庫)
視点を変えてはいるが、三度も奇術公演を描写する必要があったのかと、小一時間ほど問い詰めたい(笑) せめて伏線になっていることを願います。描写が巧くないというか、説明っぽいから読んでいて辛いのか。御大はきっと「R(ラー)言語の文showで書かれた大説だから、これでいいの」なんて言うのだろう。でもわたしには「日本語の文章で書かれた小説」にしか見えないから、やはり説明は読んでいて辛い。次が最終巻。どんなオチをつけるのか、期待しては駄目だと知りつつも期待。二ヶ月にわたり読み続けたJDCシリーズも、ついに読了です。

彩紋家事件 (3) 彩紋家の一族 (講談社文庫)
きたきた。御大ならではの、トンデモ展開。これを喜ぶようになったら、流水中毒でしょうか(笑) 好き嫌いは分かれるだろうけど、やっぱりプロットはすごい。そして他作品で広げた風呂敷や、次に広げる風呂敷にまでリンクして見せた。細部にまで強いこだわりをもつ作家だが、こだわりが自己満足方向に向いているため、細部に神が宿らない稀有な作家と言えるかも。語りたい事、試したい事が、無数にあるのは理解できるが、そぎ落とす事で物語の鋭さが増すのではないかと感じた。こだわりを捨て、描写力が増せば、すごい作家になると思うんだけどな。

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