2012年9月11日火曜日

【二五五文字書評】さようなら、ギャングたち (講談社文芸文庫)/高橋源一郎


予想以上に難しい小説。抽象的な物語(詩?)を多層的に重ねる脱小説的な様式は美しく、また現代文学への批評を含んでいる事は解る。難しいのは、抽象を重ねて何を描いているのかという事。ギャングは暴力の暗喩だろうし、著者の半生を重ねれば学生運動を指しているのであろう。社会との関わりを描いているのだろうが、残念ながら全共闘時代の世相や風俗に疎く、詩の知識に乏しいため理解が難しい。細部は美しくユーモアに富み好きな類の小説なのに、深い理解が叶わないのは歯がゆい限り。小説の面白さは、読み手の知識に依るところも大きいですね。

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