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2015年8月26日水曜日

【二五五文字書評】残虐記 (新潮文庫)/桐野夏生


一年以上に及ぶ監禁から救出された後にこそ、苦悩に満ちた日々が待ち受けている。周囲から好奇の眼差しに晒され、家庭でも父母との関係に違和感を覚え、自らの中にも消化しきれないものを抱える……この辺りの描き方、さすがは桐野氏と感心することしきり。しかし結末を、そこにだけは落としてほしくなかった。取って付けたような心情の吐露によって、作品の質が損なわれてしまったと感じずにはいられない。さてケンジは、主人公の何を許さないのでしょうか。冒頭の投げかけですが、結末に否定的な俺には、残念ながら答を見いだせそうにありません。

2012年10月26日金曜日

【二五五文字書評】グロテスク〈下〉 (文春文庫)/桐野夏生


一人称語りは取調べに対する供述で、語り手が事件に関与していると思ったがミスリードだった。選良と娼婦の二面を持ち、挙句に絞殺された女性の心の歪が主題。歪を描くために用意された登場人物がまた、それぞれに歪を抱えている。個々の歪は誰だって抱える程度のものだが、お互いが不協和音を奏でながら更に大きな歪を織り成すよう絶妙な位置関係で配置されている。筆力の高さもさる事ながら、構成の巧さが際立つ作品。最後まで心の醜い部分ばかりが供されるが、読後感が悪くないのは意外。あのラストは、語り手にとって救いとなったのでしょうか。


2012年10月18日木曜日

【二五五文字書評】グロテスク〈上〉 (文春文庫)/桐野夏生


桐野夏生作品に、初挑戦。独白と書簡(手記)形式、そして美醜の狭間を漂い、人間の本質を掘り下げる筆力。そうですか、あなたが現在の夢野久作でしたか(違) グロテスクとは巧く名付けたもので、人間の嫌な部分が赤裸々に綴られている。実際の事件をベースに書かれた作品なので、もっとルポタージュか、エンターテイメント寄りの作風を想像していたけれど、純文学寄りの印象を受けた。優れた作品には、ジャンルの壁など存在しないという事か。一人称で語られる物語。聞き手が誰なのかを考えれば、今後の展開が少しは見えそう。下巻が楽しみです。

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