2013年7月27日土曜日

【二五五文字書評】トパーズ/村上龍


初期の村上龍を読むといつもある種の無責任さや軽薄さの様なものを感じてしまうのだけれど、それは龍作品の味だと思うし八十年代の空気を巧く写し取っているようにも思う。SM嬢を主人公とした短編はどれも幻想的で美しいのだけれど、軽薄な時代を不器用に生きる女性たちの必死な姿は息苦しいほどに悲しくて切ない。それ故にそっと添えられた一粒の希望の種が際立って輝くし、小さな輝きをもってエログロで塗りつぶした物語をロマンチックにまとめ上げてしまう手腕はさすがだと感じる。やはり村上龍は天才だ。あの頃の龍は、本当にすごかった……。

人気のエントリ