2014年4月8日火曜日

【二五五文字書評】蛇にピアス (集英社文庫)/金原ひとみ


ピアスもタトゥーも自らと世界の境界を確認する行為と捉えるのらなば、息苦しいまでに悲しい物語だ。痛みによって生を感じ、常識から排除されることに自己同一性を覚える。人は自分ではない何者かになりたいと願い身体を改造するのだそうだが、タトゥーが完成し生きる気力を失うルイは、きっと気づいてしまったのだろう……自分以外の何物にもなり得ない事に。背中の龍と麒麟は、アマとシバだ。画竜点睛、背中の彼らと共に命を得る……わずかな希望が感じられるラストは、完成させないスプリットタンを流れ落ちる川とともに、とても美しいと思った。

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