2014年3月20日木曜日

【二五五文字書評】スタッキング可能/松田青子


今までにない形をした小説。いや、小説なのだろうか。散文詩や随筆の方が、近い気もする。アルファベットで名付けられた、取替え可能な登場人物たち。物語自体も取替え可能な挿話をスタックして構成され、愉快な形に積み上がっている。しかし、奇をてらった形を意識するがあまり、掘下げが浅くなっている感もあり。いやまて、あえて掘り下げず、洞察を促していると観るべきか。とするならば、取替え可能な人々を俯瞰する『わたし』の存在が効果を発揮していないように思われ、ラストの挿話が蛇足に感じられる。でも、ここが無いと意味不明だしなぁ。


以下、蛇足

主題を乱暴に総括してしまうと、他人のありきたりな価値観の押し付けや、同調圧力の加圧が嫌いで、イスを積み重ねてバリケードを築き、自分を守りたいよねぇ……ということなのかな。自分を自分のままで居させてほしいと願う気持ちはよくわかるし、著者の感性はすごく好きだし、皮肉も笑えるものばかりだし、読んでいて「あるある」や「いるいる」のオンパレードなんだけど、それ以上ではなかったかも。主題を語る手法はとても挑戦的で面白いし、他の作品も読んでみようかと思います。

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