2012年10月11日木曜日

【二五五文字書評】半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫) /村上龍


愛と幻想のファシズム、五分後の世界、ヒュウガ・ウイルス、希望の国のエクソダス……この系譜に並ぶ作品。村上龍の近未来シミュレーション作は、抜群に面白いよね。純文学作家なのに、エンタメやサブカル手法の使い方が巧い。なんだろう、この『本当に起こりそう』感は。日本の凋落も、有事の際の政府の対応の不味さも、本当に起こるかもしれないと思わせるだけのリアリティーをもって描かれている。世界観はガチガチに固めてあるけど、その上で展開される物語には、ヒロイックでロマンチックな展開が待っている予感もあるし、これは下巻が楽しみ。


以下、蛇足

作中に出てくるイシハラとノブエは、『昭和歌謡大全集』に出てきた二人だろうか。
そうか、あの二人はその後、こんな事になっていたのか……。

『昭和歌謡大全集』は、「村上先生、悪ノリしすぎっす! 少しは自重してください!」って感じで、面白かったなぁ。この作品もオススメです。

>>昭和歌謡大全集 (集英社文庫)

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