2012年9月1日土曜日

【二五五文字書評】どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)/西村賢太


大正の小説家「藤澤清造」への偏愛を綴った三編……と見せかけて“駄目な私”を綴った私小説が三編。私小説は日本文学の王道(異論は認める)との解釈に立つならば、久しぶりに文学に触れた気がする。女性への暴力は理解できないが、そこへ至る心情には共感を覚える。駄目な自分を反省しつつ、再び愚を犯す男の愚かしさ。また、酷い目に遭いながら、元の鞘へ収まる女の愚かしさ。藤澤清造への偏愛に絡めて描かれる、息苦しいまでの人間模様……正直に感想を言えば「良かった。俺より駄目な奴が居る」となるが、きっと読み方は間違えていないと思う。

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