『獣の樹
先月は『SPEEDBOY!
単行本やノベルはちょっと……と、敬遠していたあなた。この機会に、『成雄サーガ』をぜひどうぞ☆
いずれの作品も、背中に鬣の生えた、脚の速い『成雄』という名の少年が主人公なんですが……まぁ、それぞれが別のお話ではあるんですけどね。でも、テーマは低通しています。
乱暴にまとめてしまえば、テーマは“アイデンティティの確立”になるでしょうか。
成雄少年が自分の存在について思い悩むという青臭い筋立てを、舞城お得意の虚構をまぶして幻想的な味付を施し、圧倒的な文圧で外はカリッと中はフンワリ仕上げた作品となっております。
これを海原雄山が一口食したならば、「むむっ!これを作ったのは誰だ!料理人を呼べ!」と吠えまくり、何事かと驚きすっ飛んできた料理人を前に、「素材の調理もさることながら、このソースがまた素晴らしい。まったりとしていて、それでいてしつこくない。素晴らしい仕事だ。精進したな」などと、薀蓄を傾けまくった上で激励してくれるに違いありません。
非常に舞城色を感じる作品ですし、その割には比較的読みやすい部類に入るのではないかと思います。
この“比較的”ってあたりが、クセモノではあるのですが(笑)
今まで「舞城読みたいけど、どれから読んだらいい?」と問われると、いつも純文学寄りの作品を薦めていたのですが、これからはよりエンターテイメント色の強い『成雄サーガ』を薦めてみてもいいかな……なんて思っています。
舞城作品をまだ体験したことがない方も、是非チャレンジしてみてください!
……ところで、『暗闇の中で子供