2012年7月26日木曜日

【二五五文字書評】取り替え子 (講談社文庫)/大江健三郎


大江作品にしては読みやすいが、それでも著者の言うところの「自己言及癖」がハードルを上げている。実在の人物をモデルに、義兄・伊丹十三の自殺を題材にしている。そのため現実と虚構が入り混じり、不思議な感覚に陥る。これを私は読み難いと感じたが、「小説で起こる出来事は、小説の中において全て現実」と考えるなら、現実と虚構の交錯に翻弄される私の読み方こそが悪いとも言える。また著者の思想はいわゆる「戦後民主主義」に立脚しており、作中にも政治的思想が伺える箇所が多くある。その点も、読み難さを増しているのではないかと感じた。

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