2013年8月12日月曜日

【二五五文字書評】痴人の愛/谷崎潤一郎


「譲二の破滅までを描いた作品」との紹介を見かけるのだけど、在るべき位置に収まって大団円ではなかろうか。マゾヒスト冥利に尽きるよね。悦びしか伝わってこない。エロティックな雰囲気に満ちた作品なのに、直接的な性描写が無い。だからこそ余計に、エロスを感じるのだろうか。特に終盤、ナオミが顔を剃らせるシーンは素晴らしい。サデスティックな悦楽と、マゾヒスティックな恍惚……二人の思惑のドロドロの絡み合いの果てに出た台詞が「じゃあ己を馬にしてくれ」なのだから、これはもう「谷崎、変態!(褒め言葉)」と言わざるを得ないだろう。

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