2013年4月7日日曜日

【二五五文字書評】告白/町田康


思弁的であるがゆえ、意識と言語の乖離により巧く立ちまわれぬ熊太郎。社会に迎合できぬ不器用な姿は、明治という時代設定ではあるものの、とても現代的であるように感じた。読書家ならば、彼に共感する人も多いのではないかと思う。少なくともわたしは、大いなるシンパシーを感じながら読んだ。『告白』とは巧く名付けたもので、最期の台詞へと続く一連の思考と行動は、息苦しいまでの哀しさを湛えていた。本作に並び立つ作品は何かと問われれば、三島由紀夫『金閣寺』を挙げることになるだろう。三島作品と並べても、何ら遜色のない傑作だと思う。


蛇足

【ネタバレ注意】最期の告白が、冒頭の地の文にある「あかんではないか」と呼応しているのかと考えると、とても味わい深いですね。

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