2015年8月26日水曜日

【二五五文字書評】残虐記 (新潮文庫)/桐野夏生


一年以上に及ぶ監禁から救出された後にこそ、苦悩に満ちた日々が待ち受けている。周囲から好奇の眼差しに晒され、家庭でも父母との関係に違和感を覚え、自らの中にも消化しきれないものを抱える……この辺りの描き方、さすがは桐野氏と感心することしきり。しかし結末を、そこにだけは落としてほしくなかった。取って付けたような心情の吐露によって、作品の質が損なわれてしまったと感じずにはいられない。さてケンジは、主人公の何を許さないのでしょうか。冒頭の投げかけですが、結末に否定的な俺には、残念ながら答を見いだせそうにありません。

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