2014年1月27日月曜日

【二五五文字書評】妖精たちの回廊/赤江瀑


美の世界に渦巻く情念を、描き出すのが赤江瀑の筆。藝の世界を描くことが多い様だが、今回は鯉の世界が描かれる。失われた一匹の鯉と、それを追う男の失踪。物語はミステリの文脈で運ばれるのだけれど、推理物としては寸足らずな印象。美に魅せられた人達へ切り込んでいく手法として、ミステリの文脈が使われているだけなのだろう。もちろんこの事が、本作の魅力を大きく減じている訳ではない。流麗な言葉で紡がれる鯉の世界と、その美にとり憑かれ翻弄される人達の哀しさと愚かしさ。この情念のもつれこそが、本作で味わうべき魅力なのだろうから。

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