2012年6月20日水曜日

【二五五文字書評】雪国 (新潮文庫 (か-1-1))/川端康成


二十歳の頃に読んだ時、「果たしてノーベル文学賞を受賞する程の作品なのだろうか」という感想を持った。二十年を経て再読し、本作の醸す美しさの片鱗に、やっと触れる事ができた気がする。本作は、四年に渡って分載されたが、縮の村と火事の場面は十年後に「新雪国」として書き足されたと聞く。いま読んでも、新雪国のパートは蛇足ではないかと感じてしまう。旅館の部屋から二人で牡丹雪を眺め、冬の訪れを知る場面で終わってくれればと願うのは、いまだ作品を読めていないのだろうか。戦中という時代背景を重ねると、より深みが増すように感じた。

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