2015年6月21日日曜日

【二五五文字書評】ハーモニー/伊藤計劃


【ネタバレ注意!】
虐殺器官同様、主題が語られるたび、病床で執筆する著者の心情を思い息苦しくなる。病床に在って病気を克服した社会を描き、それを否とするテーゼを奏でているのだから。相変わらず、世界とSF的ガジェットの作り込みは素晴らしい。ストーリー的には、ミァハの心境の変化に理解が及ばなかった。終盤の展開も急だし。でも、主人公による完全調和阻止とならない終わり方は好き。意識喪失し幸福感に浸る多数派と、意識を持ち続ける少数派……世界はまだ、一つじゃないんですよね。この後の展開を考えるだけで、ご飯三杯くらいイケそうな終わり方です。

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