2015年6月18日木曜日

【二五五文字書評】虐殺器官/伊藤計劃


【ネタバレ注意!】
生と死。罪と赦し。どうしても病床で執筆する著者を重ねて読んでしまう。SF的ガジェットの作りこみが素晴らしく目を奪われるが、それでも繰り返し語られるテーマに著者の心情を思い息苦しくなる。ラストで主人公は、他の国々を救うため祖国アメリカを混沌に突き落とす。「ぼくはその決断を背負おうと思う」なんて言ってるけど、本当は夢に見る死者の国を産み落としただけだよね。そこは罪が罪として在る、安らぎに満ちた世界なのだから。彼は救われただろうか。赦しは失われてしまった。赦しなき救済は、不自由な自由と等価なのではないだろうか。

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